2011年の東日本大震災以降、津波の被害から人や町を守るために防波堤の設置が進んでいます。しかし、防波堤を設置することで様々な問題が生じています。ここでは、「津波を守るための防波堤」を「防波堤を設置するにあたっての問題点」を紹介します。
津波対策の堤防がどのようなものか
津波対策の堤防の種類
実は、「津波対策の堤防」は様々あります。ここでは、津波堤防の種類について紹介します。
- 海岸堤防
海岸背後にある人の命や地域を高潮や津波から守るために設置されている堤防です。三重県の伊勢湾にある堤防がこちらに該当します。
- 津波防波堤
津波の防護には上掲の海岸堤防や防波堤が効果的です。しかし水際線に高い構造物を設けることは養殖業や遊覧船の運行など支障が出る場合があります。そのときは、湾口部に防波堤を設置することで、津波の高さを抑え、陸地に侵入してくる津波の威力を弱めることが出来ます。
- 水門・陸閘(りっこう、りくこう)
津波は海岸沿いだけで起こるのではありません。海から河口を経て河川付近まで侵入してくる可能性も考えられます。それによって川の水面を上昇し、その河川堤防を破壊し、川の氾濫につながる恐れがあります。水門は、そのような被害を防ぐことが出来ます。また、陸閘は道路が堤防と交差するとき、交差部に門を設置し、津波の恐れがある際、迅速に閉鎖することが出来ます
- 津波・高潮防災ステーション
防波堤や水門などの津波、・高潮防御施設の一括管理をしている施設です。また、気象庁からの津波や高潮に関する警報や注意報を海岸の利用者や関係機関等にいち早くし、避難を促したり、水門や陸閘などの海岸保全施設を遠隔操作したりして、津波の被害を抑える役を担っています。
東日本大震災以降の津波対策の堤防について
津波による被害を抑える津波を防ぐために設置される防波堤。東日本大震災以降岩手、宮城、福島の沿岸594箇所で防波堤の建設や再整備の計画があります。その長さは約400kmに及びます。この規模の防波堤を設置するにあたって巨額の費用がかかることや、景観が損なわれることに対して批判の声が上がっています。
反対の近隣住民の声
水産業が盛んな気仙沼市では防波堤接地に対してネガティブな意見を持っています。防波堤を設置することで、漁港のアクセスが悪くなり、漁師さんが働きにくくなるという声が上がっています。そうすることで、結果的に気仙沼からひとが離れて過疎化してしまうと懸念しています。
賛成の近隣住民の声
東日本大震災で家族を亡くした方は、、また津波で人の命がなくなったら、大変なので防波堤を設置することは不可欠だと述べています。
このように、近隣順民の声だけでも、背景が異なるので賛成、反対の意見に分かれます。誰しもが納得のいく答えを導くことは難しいですが、もしもの事態に対応できる町づくりが行われることを願っています。
まとめ
東北3県(福島、宮城、岩手)で防波堤を設置すると言っても、それぞれの県での抱えている問題は異なるので、一概に防災のために防波堤を設けることは少々安直でしょう。また、東京大学公共政策大学院のレポートでは防波堤の総工費226億円かけて防波堤を設置しても、防護できるのは国道や農地などの約37億円といわれています。この「37億円」を少ないと捉えるか、高いと捉えるかは様々でしょう。今後は、南海トラフ地震などにも備え、被災3県以外でも、津波対策として防潮堤の建設が進む予定です。自然環境、地元の産業そして、住民安全と財産保全のバランスを再考することが大切でしょう。