津波てんでんことは?三陸地方に伝わる教訓が生んだ「釜石の奇跡」

津波

いつ起こるか分からない災害。特に沿岸部に住む方は地震による津波が怖いと思います。津波から身を守るには、どのような対策すれば良いのか?私はまず、「津波てんでんこ」という教えを学ぶことが大切かなと思います。津波てんでんことは津波の多い地域、三陸地方に昔から伝わる伝承です。実際にこの伝承のようにアクションを起こした釜石市の住民は東日本大震災の津波から避難し、生存率99.8%という素晴らしい功績を残しました。この功績は「釜石の奇跡」と呼ばれ多くのメディアに取り上げられています。今回そんな「津波てんでんこ」と「釜石の奇跡」について紹介します。

津波てんでんことは

まずは津波てんでんこについてお伝えします。

津波てんでんことは津波が起きた際は各自で逃げろという意味

津波てんでんことは津波の多い三陸地方に昔から伝わる災害教訓です。意味は海岸に近い場所で大きな揺れを感じたら、津波が来るから家族や友達など身近な人にも構わず各自てんでんばらばらに高台に避難して、自分の命を自分で守れという意味。「てんでんこ」は「各自、めいめい」という東北地方の方言です。

津波てんでんこの4つの意味

津波てんでんこは下記の4つの意味があります。

・自助活動の強調
・他人の避難行動の促進
・信頼関係の構築
・自責感の低減

ここではこの4つの意味を紹介します。

自助活動の強調

1つ目は「自助活動の強調」です。津波の速さはとても早いです。岩手県立博物館の大石雅之首席専門学芸員の分析によると、東日本大震災で岩手県宮古市を襲った津波の速度は時速115kmと呼ばれています。100mを3〜4秒の速さで襲ってきます。この津波の速さは水深の深さに関係します。南海トラフのように水深の深い箇所では津波はジェット機とほぼ同様のスピード(約1000km/時)という想像を絶するスピードで陸地にやって来ます。私たちの住んでいる比較的浅い箇所(水深10m程度)だと津波のスピードが遅くなりますが、それでも時速40km(自動車とほぼ同様)のスピードで襲ってきます。従って、津波が起きてから避難をしようという考えでは手遅れです。そのため、津波の危険性は察知したら自身の身の回りの方を優先するのではなく一目散に海岸から離れ高台に避難する必要があります。このような行動は薄情かもしれません。しかし、一人ひとりが家族や友達でも他人のことは考えず,てんでんばらばらに,高台に逃げることが津波から身を守り、犠牲者を少なくする方法です。

他人の避難行動の促進

2つ目は「他人の避難行動の促進」です。津波てんでんこの意味を聞いただけだと「他の人を見捨てるなんて薄情だ!」と感じるかもしれません。しかし、自分が率先して逃げることで、周りに危機感を持たせることができます。津波てんでんこの原則にしたがって避難した当人が避難場所へ向かって走って逃げることで、それを見た他の人も危機感を持ち、迅速に避難しなければいけないという意識を持たせ、避難行動を促すことが出来ます。つまり、「津波てんでんこ」は「自身が避難する」だけでなく「他者を逃す」という「共に逃げる」ための知識でもあります。

信頼関係の構築

3つ目は「信頼関係の構築」です。日頃から津波が発生したら、家族や友達、職場の方と下記のことを話すことが大切です。

・自身の命の安全を確保するための避難場所の確認
・お互いのことを考えずに一目散に逃げようという確認

このようなことを確認することで災害発生時に家族や友達の心配をしたり、自分のことを探している人がいたらどうしようと心配したりせず、避難行動を遅れずにすることが出来ます。このような日頃の密なコミュニケーションが災害の避難活動にも結びつきます。

自責感の低減

最後は「自責感の低減」です。津波などの災害によって身の回りの人が怪我したり、時には亡くなったりした時、生存者はなぜ自分だけ生き残ってしまったのかと自身を責めてしまうことがあります。しかし、周囲の人と「津波てんでんこ」を基に事前に話し合っておけば、約束していたことだから仕方がないと罪悪感を軽減できるかもしれません。

「津波てんでんこ」の事例

ここまで、津波てんでんこについてお話ししました。ここからは津波てんでんこの事例、「釜石の奇跡」について紹介します。

津波てんでんこが生んだ「釜石の奇跡」とは?

「釜石の奇跡」の主人公は釜石市の鵜住居(うのすまい)地区にある中学校に通う生徒です。東日本大震災の当時、避難訓練等で流れる校内放送が地震によるスピーカーの故障で流れませんでした。しかし、地震の異変にいち早く気づいた生徒が校内放送が流れなくても、危険を察知し自主的に校庭を駆け抜けました。避難中も「津波が来るぞ!」と叫びながら避難所に指定されていた高台にあるグループホーム「ございしょの里」まで避難しました。また、当時中学校と共に避難訓練を行なっていた隣接する鵜住居小学校の小学生たちも、後に続きました。しかし、避難場所と指定されていた「ございしょの里」の裏手は山になっており、今にも土砂崩れが起きそうでした。それに気づいた男子生徒がさらに高台へ移ることを提案し、避難をしました。東日本大震災の津波が想像以上の規模だったので、間もなく、ございしょの里は波にさらわれてしまいました。避難場所に指定されていた「ございしょの里」より高台に避難した生徒たちは避難中の幼稚園から逃げてきた幼児たちに会い、小学生の手を引いたり、幼児が乗るベビーカーを押したりして無事避難することができました。

「津波てんでんこ」「釜石の奇跡」についてもっと知るには

ここまで「津波てんでんこ」と「釜石の奇跡」について紹介しました。津波てんでんこという災害避難の教えを守り、かつ自発的に行動を起こした中学生によって多くの方が津波の被害から逃げることができました。この伝承は本やDVDなど様々なメディアで紹介されています。ここではその一部を紹介します。

釜石の奇跡 子どもたちが語る3・11 【DVD】

東日本大震災の当時、生徒は全員下校していました。家で弟とゲームをしていた子。海岸で釣りをしていた6年生のグループ。ひとりで留守番をしていた子。それぞれの子は経験したことのない大地震の直後、臆せず日頃の防災授業や避難訓練を思い出し、大人同様の行動をとって自分たちの力で生き延びたのです。東日本大震災の直後、子どもたちがどのように考えて、判断を下し、行動したのか。その当時を振り返り、危機管理のモデルケースとしても各界から注目される「釜石の奇跡」を、ひも解きます。収録時間は約50分です。映像なので伝わりやすくお子さんにもおすすめです。

釜石の奇跡 どんな防災教育が子どものいのちを救えるのか?

「釜石の奇跡」の子どもたちの当時の様子を振り返りまとめた「防災教育」や「危機管理術」がまとめられた書籍です。国内外問わず、アメリカ・ドイツ・中国などでも受賞をしました。どんな防災教育なら、子どものいのちを救えるのか?を紐解いていきます。加えて、「釜石の奇跡」を生んだ背景にあった震災が起こる前から取り組んでいた防災教育や企業が取り組む危機管理術などが含まれています。一見すると、教育関係者や企業のトップ層など誰かを守る方向けと書かれたもの思われがちですが、自身の防災意識を高めるためや実際の災害の現状を知るためにもお役に立つ良書です。

津波てんでんこ 近代日本の津波史

明治以来〜近代日本を襲った津波の中で死者100人以上を超えた8つの津波被害について振り返り、当時の社会背景や津波の概況、津波防災上の今日的な教訓について考察しています。また、防災行政や津波防災教育のあるべき姿に警鐘を鳴らしている書籍でもあります。「津波がいかに恐ろしいか」というのを地震学者や研究者でなく、地元に住んでいる筆者自身がまとめたもので信憑性が高いものとなっています。

「釜石の奇跡」に関する記事

まずは、釜石の奇跡の概要をもう少し知りたい!という方は下記の記事をご覧ください。釜石の奇跡に付随して政府や自治体などのトップダウンで作成されたハザードマップや津波対策用の建物などのハードは信じるな!といった内容が書いてあるものもあるので、是非ご確認ください。

小中学生の生存率99.8%は奇跡じゃない
岩手県釜石市内の小中学生ほぼ全員が、このたびの震災で津波の難を逃れた。彼らは、いかにして防災意識と対応力を身につけたのだろうか。
【温故地震 大震災編】生存率99・8%「釜石の奇跡」 「津波てんでんこ」の教えの正しさ 都司嘉宣
千年に一度の超巨大津波に襲われた東日本大震災から明日で3年。被災地の調査を続ける中で、常々思い知らされるのは「津波てんでんこ」の教えの正しさだ。てんでんことは各…

まとめ

いかがだったでしょうか?この記事を通して「津波てんでんこ」や「釜石の奇跡」についてすこそでも興味を持ち、防災意識を持っていただけたら幸いです。津波てんでんこの教えを守ることで自身の生命はもちろん周りの方の命を助けることもできます。ぜひ、皆さんも周りの人と津波てんでんこを基に避難について話し合ってみてはどうでしょうか?

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